映画ブログを目指す雑記ブログ

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ありそうなショートショート『宇宙』

『宇宙』

彼らの住む暗闇の空間は有限であり、少しずつ広がっているが彼らから見れば、とてつもなく小さい。そして、彼らの種族は現在、100人ほどだ。

N氏はその空間の長である。そしてN氏は今日も議長として会議に参加している。

「第538回空間会議を始める。『空間が有限であることを気づかせないためにはどうすれば良いか?』が今回の議題である。我々の種族も昨今、繁栄再来の兆しが見えてきた。このまま増えれば、空間が有限であるということに、また気づかれてしまう懸念がある。」
N氏とその周り数人が今日も議論をしている。
「まず前提として、この空間で観測できている生命体は数えきれないほどだ。しかし、我々の種族が一番大きい。そして我々が一番進化している。しかし、個体を小さくして生活するということは多くの『謎』を抱える原因となり、ご存知のとおり『謎』を多く抱えるということは知的好奇心を揺さぶることになり、色々な問題が出てくる。」
N氏の住む空間では「我々の住む空間はとても小さい」という以外、ほぼ全ての事が共有されていた。また、彼らは自らの空間を生成できる技術を持っていたが、結局オリジナルの空間には劣るという結果も出ていた。だから、オリジナルの空間で生活をしているというわけだ。しかし、オリジナルの空間が小さいことが種族の間に広がると、多数の自殺者を出してしまう。なので、N氏達、すなわち管理しているものがその情報などを統制しているということなのだ。

「しかし、議長。逆にこの情報をいずれは共有し、自殺させないよう試行錯誤すれば宜しいのではないでしょうか?」

「いや、その試みは遠い過去に、もう何十回としているが成功した試しがない。個々のメンタルは遺伝子操作でも、なにをやっても操れないということは変わらないんだ。メンタル値はランダム生成なんだよ。」

「ですが議長、このままでは結論の出ない状態が続いてしまいます。早急に結論を出さなければ…。なので私が提案するのは、また種族を1つの生命体に纏めるというのはどうでしょう?」

「あぁ、なるほど。確かにその手もあるな。だが、それをやったのが昔すぎて、なぜ取り止めたのか思い出せん…」

「ですが気づかれるのは最早、時間の問題です。今すぐにでも実行しましょう!」

「そうだな。満場一致ということだし、実行するか。」

その日、N氏たち種族が1つの生命体に纏まった。


それから途方もないくらいの遠い月日が経ち…



「第546回空間会議を始める。『空間が有限であることを気づかせないためにはどうすれば良いか?』が今回の議題である。」